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森 悠一郎*; 鍵 裕之*; 青木 勝敏*; 高野 将大*; 柿澤 翔*; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*
Earth and Planetary Science Letters, 634, p.118673_1 - 118673_8, 2024/05
水素による鉄の体積膨張に対するケイ素の効果を調べるため、高圧高温下でのhcp-FeSiの中性子回折実験とX線回折実験を行った。中性子回折実験は重水素化hcp-FeSiに対して13.5GPa, 900K及び12.1GPa, 300Kで行い、得られたプロファイルからリートベルト解析を用いて水素占有率を決定した。hcp-Fe-SiのP-V-T状態方程式を組み合わせることにより、hcp-FeSiの水素による体積膨張が純粋なhcp鉄の体積膨張よりも10%大きいことを示した。得られた値を用いて、内核の密度欠損を再現できる水素量を見積もったところ、シリコンの影響がない場合に比べて50%減少した。hcp-FeSiで内核の密度欠損を再現した場合、内核と外核で可能な水素量xはそれぞれ0.07と0.12-0.15と計算された。
関根 由莉奈; 南川 卓也
Bulletin of the Chemical Society of Japan, 96(10), p.1150 - 1155, 2023/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Chemistry, Multidisciplinary)凍結中に起こる氷の結晶と溶質および結合水の相分離は、ハイドロゲルの階層構造を制御するための反応場として使用できる。本論文では、固体-準液相分離を使用して形成されたカルボキシメチルセルロースナノファイバー(CMCF)ハイドロゲルの研究を紹介する。CMCFハイドロゲルは、凍結したCMCFにクエン酸を加え、混合物を解凍するだけで形成された。凍結架橋CMCFの圧縮強度は、従来の架橋法で形成したCMCFハイドロゲルに比べて20万倍向上した。氷結晶が溶ける前の凍結濃縮層では、水素結合を介したCMCF構造の再配列が進行していることがわかった。凍結濃縮下では、CMCFと結合水が高濃度に閉じ込められる。このような独特な空間での架橋反応により、機械的強度の高いCMCFハイドロゲルが形成された。凍結架橋CMCFハイドロゲルのゲル化挙動と特性、およびその応用について説明する。
大井川 宏之
四季, 59, P. 1, 2023/06
東海村にはJ-PARCとJRR-3という世界有数の中性子科学の研究施設がある。これらの施設が生み出す価値を国民に伝えるため、利用者の皆様には成果をアピールしていただきたい。
三ツ井 誠一郎
金属, 93(3), p.211 - 218, 2023/03
地層処分研究開発の一環として、地層処分で想定される現象に類似した、天然類似現象(ナチュラルアナログ)を対象とする研究、「ナチュラルアナログ研究」が実施され、地層処分で想定される現象の予測モデルの概念や評価手法の妥当性の検証に利用されている。日本原子力研究開発機構が実施してきた金属製遺物を対象としたナチュラルアナログ研究の成果を通じ、出土金属製遺物から得られる知見を地層処分研究開発にどのように活用しているかを紹介する。
西尾 和久*; 花室 孝広; 見掛 信一郎
JAEA-Review 2022-019, 42 Pages, 2022/08
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構東濃地科学センターでは、平成8年度から実施してきた超深地層研究所計画における調査研究を令和元年度をもって終了するとともに、令和4年1月14日に研究所の研究坑道埋め戻し等工事を完了した。今般、研究成果の取りまとめが終了したため、当該計画で得られた研究成果及び坑道埋め戻し等の工事内容を報告するための最終報告会を開催した。本報告書は、令和4年2月9日に開催した「超深地層研究所計画最終報告会」で用いた発表資料を取りまとめたものである。
杉原 弘造
JAEA-Review 2022-006, 74 Pages, 2022/05
この資料は、東濃鉱山の歩みを示すひとつの試みとして、日本原子力研究開発機構の研究開発成果検索・閲覧システム(JOPSS: JAEA Originated Papers Searching System)において、「東濃鉱山」でフリーワード検索をかけた際にヒットする研究開発報告書類等の概要を時系列的に整理したものである。2022年2月1日現在、JOPSSで「東濃鉱山」でフリーワード検索をかけると、研究開発報告書類214件、学会誌等掲載論文54件、口頭発表9件がヒットする。ここでは、東濃鉱山の歩みを示す観点から、個別の調査や作業ごとに作成されることの多い研究開発報告書類を中心に整理した。ただし、これらにはウラン探鉱事業の時代のものは、ほとんど含まれない。一方で、JOPSSで検索可能な国内ウラン探鉱事業の成果が取りまとめられている報告書の中に、東濃鉱山やその周辺での探鉱活動を含めた時系列的な記述が見られる。また、旧動力炉・核燃料開発事業団年史にも東濃鉱山に関する時系列的な記述や年表がある。このため、ウラン探鉱事業の時代の東濃鉱山の歩みについては、これらの資料から関係部分を抜粋して示した。
Mattan, K.*; 小野 俊雄*; 河村 聖子; 中島 健次; 南部 雄亮*; 佐藤 卓*
Physical Review B, 105(13), p.134403_1 - 134403_8, 2022/04
被引用回数:3 パーセンタイル:45.85(Materials Science, Multidisciplinary)スピン1/2のカゴメ格子反強磁性体CsCuSnFの磁気励起について、高分解能飛行時間法中性子非弾性散乱実験によって調べた。フラストレートしたカゴメ格子反強磁性体に特徴的な平坦なモードや低エネルギー側の強い分散を持つモードは線形スピン波理論で記述できる。しかし、一方で、9-14meVの領域にある分散を持つ強度の弱い3つのモードについてはそれが破綻する。この3つのモードについては、ゾーン中心から離れるか温度を上げるかすると自由スピノンに崩壊して連続励起になる2スピノン束縛状態と思われる。
奥村 雅彦
地球化学, 55(4), p.110 - 121, 2021/12
福島第一原子力発電所事故によって環境中に放出された放射性セシウムの一部は表層土壌に強く吸着し、住民避難の原因となった。国による大規模除染によって居住地の空間線量率は低下し、住民帰還が実現するに至ったが、除染により排出された放射性セシウムを含む除染除去土壌の処分は今も大きな問題として残されている。放射性セシウムは土壌中の雲母粘土鉱物によって強く吸着されていることが知られているが、その吸着機構は明らかになっていなかった。本稿では、事故以来継続的に実施してきた放射性セシウムの雲母粘土鉱物による吸着現象に対する計算科学的研究について総合的に解説する。
武田 全康
ぶんせき, 2021(11), p.611 - 615, 2021/11
東日本大震災の影響で10年にわたり運転を休止していた研究用原子炉JRR-3が2021年2月に運転再開したことにより、大強度陽子加速器実験施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)の大強度パルス中性子源と大強度定常中性子源(研究炉)の両方を利用することのできる中性子科学推進の場が茨城県東海村の日本原子力研究開発機構原子力科学研究所の敷地内に実現した。本解説では、それらの施設の特徴とそこに設置されている装置群を紹介する。
遠藤 章
放計協ニュース, (68), P. 1, 2021/10
原子力機構原子力科学研究所の研究用原子炉JRR-3の施設利用再開について紹介する。2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、原子力規制委員会が策定した新規制基準への適合性の確認を経て、JRR-3は2021年7月に10年7か月ぶりに施設利用を再開した。JRR-3は、大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設(MFL)と連携した中性子利用の研究拠点として、学術及び産業利用において、今後多くの成果を創出していくことが期待されている。
Gtz, M.*; Gtz, S.*; Kratz, J.-V.*; Ballof, J.*; Dllmann, Ch. E.*; Eberhardt, K.*; Mokry, C.*; Renisch, D.*; Runke, J.*; 佐藤 哲也; et al.
Radiochimica Acta, 109(3), p.153 - 165, 2021/03
被引用回数:3 パーセンタイル:44.61(Chemistry, Inorganic & Nuclear)超重元素揮発性カルボニル錯体の化学研究のために、反跳によって標的もしくは線源から飛び出す核反応生成物または核分裂生成物を熱化し、さらに気相カルボニル錯体合成を行うための2槽型装置を開発した。この装置は、空間的にデカップルされ熱化チェンバーと気相化学反応チェンバーから成り立ち、核反応等で生成した短寿命核種が熱化チェンバーに満たされたガス中で熱化されたのち、気相化学反応チェンバーに送り込まれて、一酸化炭素と反応することでカルボニル錯体を形成する。U中性子誘起核分裂およびCm自発核分裂からの核分裂片を用いて検証したところ、全体効率として50%以上を達成した。また一連の結果により、熱化された核分裂生成物のカルボニル錯体形成が単一原子反応であり、熱原子反応ではないことを示した。
須田 一則; 木村 隆志; 中谷 隆良; 清水 亮; 田崎 真樹子; 玉井 広史
第41回日本核物質管理学会年次大会会議論文集(インターネット), 3 Pages, 2020/11
ソビエト連邦の崩壊により、大量破壊兵器の研究・製造に関する研究者・技術者を求める国への拡散という懸念が、西側諸国により提起された。これらの脅威を削減するため、核開発研究者・技術者を平和利用目的で雇用することを目指して国際科学技術センター(ISTC)がモスクワに設立された。本研究に資するため、大量破壊兵器に関する科学者等の拡散防止方策、研究成果の活用等を含むISTCの貢献や良好事例について、検討結果を議論する。
Wu, P.*; Fan, F.-R.*; 萩原 雅人*; 古府 麻衣子; Peng, K.*; 石川 喜久*; Lee, S.*; 本田 孝志*; 米村 雅雄*; 池田 一貴*; et al.
New Journal of Physics (Internet), 22(8), p.083083_1 - 083083_9, 2020/08
被引用回数:9 パーセンタイル:57.85(Physics, Multidisciplinary)熱電材料SnSeは、過去数年間で世界的な関心を呼び、その固有の強い格子非調和性は、その優れた熱電性能の重要な要素と見なされている。一方、SnSeにおける格子非調和性の理解は、特にフォノンダイナミクスがこの動作によってどのように影響を受けるかに関して、依然として不十分である。そのため、中性子全散乱,非弾性中性子散乱,ラマン分光法、および凍結フォノン計算により、NaSnSeSの格子力学の包括的な研究を行った。格子非調和性は、対分布関数,非弾性中性子散乱、およびラマン測定によって確かめられた。熱膨張と多重フォノン散乱の影響を分離することにより、後者は高エネルギー光学フォノンモードで非常に重要であることがわかった。フォノンモードの強い温度依存性は、この系の非調和性を示している。さらに、我々のデータは、Sドーピングにより、高エネルギー光学フォノンの線幅が広がることを明らかにした。私たちの研究は、SnSeの熱電性能は、フォノンエンジニアリングを介して格子熱伝導率への高エネルギー光学フォノンモードの寄与を減らすことによってさらに強化できることを示唆する。
飯田 一樹*; 吉田 紘行*; 中尾 朗子*; Jeschke, H. O.*; Iqbal, Y.*; 中島 健次; 河村 聖子; 宗像 孝司*; 稲村 泰弘; 村井 直樹; et al.
Physical Review B, 101(22), p.220408_1 - 220408_6, 2020/06
被引用回数:22 パーセンタイル:80.82(Materials Science, Multidisciplinary)鉱物センテニアライトCaCu(OD)Cl 0.6DOの結晶構造と磁気構造をシンクロトロンX線回折と中性子回折測定に密度汎関数理論(DFT)と疑似フェルミオン汎関数繰り込み群(PFFRG)の計算を組み合わせることで調べた。CaCu(OD)Cl 0.6DOではCuイオンは反強磁性と幾何学的に完全なカゴメネットワークを形成する。CuとCaイオン間のサイト間無秩序は見つからなかった。CaCu(OD)Cl 0.6DOは=7.2K以下で磁気秩序を示し、負のベクトルスピンキラリティーを持つ=0の磁気構造が現れる。0.3Kでの秩序モーメントは0.58(2)Bに抑えられている。我々のDFT計算では、この系が量子臨界点の近くにあり、--カゴメ反強磁性体の優れた実現であることを示唆している。
山本 正弘
材料と環境2020講演集(CD-ROM), p.9 - 16, 2020/05
長年にわたり腐食科学の研究開発に従事してきた。特に計算科学的手法を腐食の問題の解決に活用することを進めてきた。また、福島第一原子力発電所事故を受けた設備・機器の腐食問題についてのワークショップなどを実施してきた。その様な活動が評価され、今般腐食防食学会賞の受賞につながった。
宮川 和也; 女澤 徹也*; 望月 陽人; 笹本 広
JAEA-Data/Code 2020-001, 41 Pages, 2020/03
幌延深地層研究計画における深地層の科学的研究では、実際の地下の地質環境特性を調査するための技術開発や、得られた地質環境特性に基づく地質環境モデルの構築が進められている。地質環境モデルの1つである地下水の地球化学モデルの構築・見直しにあたっては、地下施設周辺における地下水の水質データが必要である。本報告は、2017年度2019年度までの3年間に、幌延深地層研究計画で得られた地下水の水質データとして、物理化学パラメータおよび水質の測定・分析結果を取りまとめたものである。
武田 全康
波紋, 30(1), p.7 - 8, 2020/02
JRR-3は2018年11月7日付けで原子炉設置変更許可を取得し、原子炉建屋の屋根などの耐震工事を経て、2021年の早期に運転再開を果たす。研究用原子炉を使った中性子科学の将来は、JRR-3の運転再開後にいかに社会的インパクトのある成果を創出できるかにかかっている。この状況において、我々は、波紋に掲載された過去の記事から多くのことを学ぶことができる。
村松 壽晴
JAEA-Research 2019-008, 111 Pages, 2019/11
レーザー光を熱源とした材料加工などに対する数値解析的な評価手法の確立を図ることを目的として、レーザー溶融・凝固計算科学シミュレーションコードSPLICEを開発した。本コードは、レーザー加工分野における多品種少量生産を行う上で、レーザー照射条件などの設定に費やすオーバーヘッドを適切に低減させるため、レーザー-物質相互作用、半溶融帯を介した溶融金属-固体材料間の熱的機械的相互作用、溶融・凝固相変化過程などの複合物理過程を取扱うために必要となる物理モデル, 数学モデルなどを導入した気-液-固統一非圧縮性粘性流汎用多次元コードである。本コードの主要な特徴は以下の通りである。(1)ミクロ挙動とマクロ挙動とを多階層スケールモデルにより接続し、固体材料へのレーザー光照射から、固体材料の溶融・凝固過程までの一連の複合物理過程を、汎用ワークステーション上で評価することが可能、(2)レーザー光を熱源とする材料加工として、溶接, 溶断, 穿孔, コーティング, 金属光造形などを対象に、数値解析評価が可能、(3)SPLICEコードユーザーへの負荷を低減させるため、グラフィックユーザーインターフェースを整備し、対話形式でのコード運用が可能なことである。
村松 壽晴; 佐藤 雄二; 亀井 直光; 青柳 裕治*; 菖蒲 敬久
日本機械学会第13回生産加工・工作機械部門講演会講演論文集(No.19-307) (インターネット), p.157 - 160, 2019/10
本研究は、レーザーによる異種材料溶接を対象とし、溶接時の温度管理等を適切に行うことにより、発生する残留応力を低減させることを目的とする。報告では、残留応力発生に大きな影響を持つ溶融池・凝固過程での過渡温度挙動を、計算科学シミュレーションコードSPLICEにより評価し、溶接加工時の伝熱流動特性に基づき、溶接施工時に溶融池領域の表面温度分布をサーモグラフィーなどにより把握することにより、これを指標として冷却速度をレーザー加熱などによって制御し、温度勾配解消が期待できる溶融池内対流輸送を維持し、発生する残留応力を低減できる可能性を示した。
三輪 一爾; 寺阪 祐太; 越智 康太郎; 普天間 章; 佐々木 美雪; 廣内 淳
日本原子力学会誌ATOMO, 61(9), p.687 - 691, 2019/09
本報告は、日本原子力学会2019年春の年会にて実施した、保健物理・環境科学部会の企画セッションの内容をまとめたものである。本企画セッションでは、原子力・放射線分野に携わる学生および若手研究者6名が、それぞれの専門的知見を通して見た保健物理・環境科学の在り方について講演を行った。全講演者の発表終了後には来場者を含めて当分野の課題や今後の発展についてディスカッションを行った。本報告書では、各講演概要とディスカッション内容の取りまとめを行った。